季節のおすすめ花材「唐ごま」

2025 9/17

色と質感、形に遊ぶ
小原流研究院教授 工藤亜美


唐から来た胡麻似た草、唐ごま。別名、ヒマ(蓖麻)。唐ごまの種は、紀元前4000年頃のエジプトの墓からも見つかっている。古来(ルビ:いにしえ)より、ひまし油を灯りや身体に塗る油として使用していたとの記述もある。
日本には、中国を経由して平安時代に渡来、花材として使われたのは戦後のようだ。写景盛花様式本位の花材ではあるが、三世豊雲先生からの作品しか残っていない。父から聞いた話では、戦後まだ食糧もままならない中、いけばなが復興しようにも花材の調達に困っていた時に、焼け野原に生えた唐ごまのその個性的な色や質感に注目して、花材として用いられるようになったとのこと。
夏樹先生の作品は、質感、形。茎の赤。緑の葉、赤と緑に合わさった不思議な色の葉、実と花。唐
ごまの魅力が余すところなく伝わってくる。

小原夏樹『小原流挿花』 1987 年10 月号「いける」より
写真:小林庸浩
花/ 唐ごま
器/ 佐藤和彦創作花器

花産地より
唐ごまは、以前はいけばな花材として全国で栽培されていましたが、昨今は市場での価格が安定しいことが多く、生産が減っています。水が下がりやすく遠方輸送に適さないため、各地域で生産者を絶やさぬように、地元で使い続けることが課題です。

協同組合豊友会
豊友会は、全国の小原流支部に花材を提供する生花店の協同組合です。 いけばな花材を守るプロジェクトは、豊友会と小原流が協力し、生産が 減少している花材を積極的に利用することで花の生産地を支える取り組みです。季節の対象花材(一部)は、1 杯からご自宅へお届けします。

引用:小原流挿花2025年9月号より