季節のおすすめ花材「谷渡り」

2025 10/13

熱帯域で見る、谷渡りの景色
小原流五世家元 小原宏貴


1929(昭和4)年に発行された、二世の時代の作品集『盛花瓶華集』からリメイクした写景盛花自然本位です。樹木に着生する谷渡りを株挿しでとらえ、熱帯に自生する植物の姿を表現しました。元となった作品では、谷渡りを株挿しし、水際を広く見せていますが、私はあえて水盤
全体を日蔭蔓で覆い、鬱蒼(ルビ うっそ う)とした表情を描きました。本来、そのような場所には菜の花はありませんが、その時に手に入る花材の取合せを楽しみました。色彩盛花様式本位のお稽古はもちろん、谷渡りの持ち味を生かしてさまざまな表現を取り入れてみましょう。

小原宏貴 写景盛花自然本位
花/ 谷渡り 流木 菜の花 日蔭蔓(ルビ ひかげのかずら)
器/ 佐藤和彦作創作水盤

花産地より
谷渡りは、国内では主に沖縄県で生産されますが、切り葉の価格低迷などから生産者が減少しています。豊友会の花店では、色彩盛花様式本位の一株挿しに応じて葉を選別し、皆さまへお届けしています。いけばな花材を守るプロジェクトは、これからも生産が続くように谷渡りの利用を推進していきます。

協同組合豊友会
豊友会は、全国の小原流支部に花材を提供する生花店の協同組合です。 いけばな花材を守るプロジェクトは、豊友会と小原流が協力し、生産が 減少している花材を積極的に利用することで花の生産地を支える取り組みです。季節の対象花材(一部)は、1 杯からご自宅へお届けします。

引用:小原流挿花2025年10月号より