可憐な野の百合の美しさ
小原流研究院副院長 金森厚至
夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ 恋は苦しきものそ (大伴坂上郎女)
『万葉集』に詠まれるように、姫百合には、繁みに紛れて楚々と咲く姿に魅力があるでしょう。
写景盛花様式本位の夏の近景描写に、「夏の多種挿し」があります。下草を使わず、夏の枝の繁茂する姿を低く構成し、その間から抜き出る草花の姿を表現する独特の挿法です。その前段階として三種の挿法で学ぶ 「夏の三種挿し」では、姫百合が取り合わせられています。 控えめながらも美しい花姿をとらえたい表現です。
写景盛花様式本位 夏の三種挿し 花/夏はぜ 姫百合 桔梗 近景描写 直立型
花産地より
百合「プチシリーズ」
山口県で育成されている小輪の百合「プチシリーズ」。花色が豊富で、写景盛花様式本位はもちろん、色彩盛花や琳派調いけばななど、さまざまな表現に活躍する花材です。シリーズの中の「プチソレイユ」と「プチシュミネ」は、近年入手困難となっている姫百合の代替として注目されています。
プチシリーズの中の一つ「プチソレイユ」
いけばな花材を守るプロジェクトとは
豊友会と小原流が協力し、生産が減少している花材を積極的に利用することで、花の産地を支える取り組みです。


引用:小原流挿花2025年5月号より